ジョン・タッグ『表象の重荷』:写真、アーカイブ、そして統治の考古学
それは「名作写真史」ではなく、制度史でありアーカイブ考古学である。写真がいかに国家装置に組み込まれ、文書システムの中で権威を獲得していったかを問う。
英国の学者ジョン・タッグ(John Tagg)は、1980年代に写真、国家、アーカイブ制度に関する論文を発表し、1988年に『表象の重荷』としてまとめました。本書はフーコー的な権力=知の枠組みとアーカイブ研究の手法を用い、「ドキュメンタリー」と「証拠」を再評価します。すなわち、写真が警察、貧困統治、医療といった制度の中でいかに生産され、使用されてきたかを明らかにします。
中核的観点:証拠、統治性、そしてアーカイブの権力
タッグの論証は、主に4つの道筋に沿って展開されます。
1. 「証拠」は製造される:写真の権威は制度に由来する
タッグは、写真が「証拠」となるのは、その自然な真正性によるのではなく、警察、裁判所、福祉施設の文書プロセス(番号付け、注釈、ファイリング、照合)に組み込まれるからだと主張します。結論:写真の「証明力」は、イメージ固有の天賦のものではなく、アーカイブの「手続き」の産物なのです。
2. ドキュメンタリー写真は中立的記録ではなく、統治術(Governmentality)の一環である
救貧院や監獄の肖像に至るまで、ドキュメンタリー・イメージは、人口を「可視化し、分類し、比較可能にする」という統治の工学に参加しました。それは被支配者を(貧民、犯罪者といった)記述可能なカテゴリーに固定し、規律と正常化の道具となりました。要点:ドキュメンタリーの「同情」は、しばしば「監視」と並行して機能します。
3. 主体の生産:家族アルバムから警察の記録まで
同じ技術が、異なる場で全く異なる「私」を生産します。家族写真における「自己の物語」も、警察の記録における「被疑者」も、イメージ=テクスト=コードによって共同で構成されます。タッグは、写真が対象を「表象」するだけでなく、その社会的アイデンティティを「構築」し固定化すると強調します。
4. 歴史記述の方法論:作品から文書と実践へ
タッグは研究の焦点を名作や作家から、帳票、規則、アーカイブの分類法、行政プロセスへと移します。彼は(英米の福祉・警察制度の)ケーススタディを用い、「小さな技術—大きな効果」をもたらす歴史記述を示し、再利用可能な研究パス(文書学+制度史+言説分析)を提供しました。
価値と影響:制度分析のツールボックスとして
『表象の重荷』の不朽の価値は、二つの層で理解できます。
- 方法と道具としての価値:本書は写真研究の問いを精確に転換させます——(a) 制度的視点:イメージが「いかに」アーカイブとプロセスに組み込まれたかを問う。(b) 統治術モデル:「紀実」の社会的効力を分類・監視・統計で説明する。(c) 主体化の分析:写真が人を「いかに」管理可能な対象として位置づけるかを理解する。
- 長期的影響:本書はアラン・セクーラ(Allan Sekula)の「労働/アーカイブの政治」と並行し、「証拠—監視—統治」路線の古典的座標軸を構成します。アーカイブ研究、監視研究、警察史に影響を与え、植民地イメージや移民管理の研究に方法論を提供しました。デジタル・データベースの時代においても、タッグの洞察は有効です。
『表象の重荷』が教えるのは、一枚の「証拠写真」を判断するには、イメージだけを見るな、ということ。——まず、それに権威を与えているアーカイブの規則と統治の場を見極めよ、と。


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